知られたくない、気持ち。
知られたくなかった、過去…。
出来れば、全てを忘れ去った自分で、生まれ変わった私で、彼を好きだと言いたかったのに。
その願いは今…粉々に砕かれてしまった。
「……っ。瑛飛さん、今日はもう帰りたい……」
「…水美…」
「ごめんなさい…折角お店選んでくれたのに…」
「いや…そんなことはどうでもいい…けど…」
「…ごめんなさい…」
「………分かった。じゃあ、せめて家まで送らせてくれ」
ぎゅっと白くなる程握り締めた手。
その手を解くようにして、彼は私の手を取り歩き出す。
私を気遣って、あまり視線を合わせないようにして。
壁が、出来たみたい…だ。
さっきまで、あんなにもぴたりと吸い付くようにしてあった温もりが、胸に痛い。
「水美…?」
「はい…?」
「お前はお前でいいから。…気にするな」
ぽん
髪を撫でられて、涙がじんわりと少しずつ視界に滲む。
私は泣くのを悟られたくなくて、慌てて下を向いた。
「…はい」
彼の手は何時だって優しい。
さっきの出来事で冷え切ってしまった心を溶かしていくくらいに穏やかだった。
「ありのままの、そのままの水美が…俺は欲しいから」
後から降って来た言葉に、なんとも言い難い想いが競り上がってくる。



