「おい。何してる?」
「…は?何?俺、おっさんなんかに用はねぇよ?」
いきなり彼に話し掛けられて、一瞬間を置いて和登はいきがる。そんな所も以前とちっとも変わっていなかった。
「お前になくてもこっちにはあるんだよ。その手を今すぐ彼女から放せ」
「はぁ?何言っちゃってんの?あんた何様?」
「放せ、と言ってる」
少し息を荒くしてそこに現れた瑛飛さんは、サッと何事もないように和登との間に入ろうとしてくれる。
私は二人のやり取りをどうする事も出来ずに、ただ見つめていた…。
「あのさぁ?なんで、あんたにそんな事言われなきゃなんねぇの?おっさん、喧嘩売ってる?」
「放さないと言うなら、な。」
彼から生まれた笑みは、肌を切るんじゃないだろうかというくらい、冷たかった。
声は地を這うほど低く鋭い。
そんな彼に怖じ気付いたのか、和登は…それでも名残惜しそうに私の肩から手を放した。
すぐさま私は彼の後ろに隠されるようにして、庇われた。
「キミが、どういうつもりで彼女に声を掛けたか知らないが…人のものに手を出すのは、止めた方がいい…じゃないと、何時か痛い目に遭うぞ?」
けして、声を荒らげる事なく、けれどしっかりと相手の瞳を捕らえて、そう告げた彼は…酷く悲しそうだった。
「ちっ、なんなんだよ!人に恥掻かせやがって!大体そんな女こっちから願い下げなんだよ!こんなつまんねー女なんかな!」
負け犬の遠吠えよろしく、和登はそれだけ言うとくるりと踵を返してその場からいなくなった。
私は、嫌な汗が滲んだ額を拭って、ぐったりと力の込めていた体を弛緩させた。



