「あれ?水美?…水美じゃん」
「………っ」
忘れようとしていたのに。
どうして、こんな所で出逢わなければいけないのか。
しかも、図られたようなこのタイミングで…。
「なんだよ、シカトこくなよ。冷てぇーな」
声の主は、年下の甘ったれで何かとやんちゃな…元、恋人だった。
「いきなりスマホの番号とか変えるんだもんなー。部屋のカギも変わってるし…ひでぇよ」
そう言って…彼は私の肩に手を置くと、甘えたような声で更に話し掛けてくる。
「俺さー。やっぱり水美がいいな。他の女じゃ駄目なのよ…なぁ?やり直そうぜ?今からでも遅くないだろ…?」
「や、めて。もう和登(かずと)とは別れた、んだから」
抵抗しようとする声が喉の奥で引きつって、上手く出せない。
それに対して、ムッとしたように声色を変える和登。
「なんだよ?お前の事、俺なりに大事にしてやってたじゃん。お前もそれで満足してただろ?」
一方的な会話が続き、思考が、落ちていく。
触られた肩が気持ち悪くて仕方がない。
吐き気に苛まれて、口元に手をやろうとすると、その手を奪われた。
舌っ足らずな、言葉の羅列。
その無責任さに、身の毛がよだつ……。



