軽い調子で、そんな風に言われて、きゅっと眉間にシワが寄ってしまった。
ついでに見えない方の拳も握り締める。
誰にでもそんな事言ってるんでしょ?
なんて、そんな猜疑心を持った視線を投げ掛けながら…。
「……それは、嫌です」
「えー?なんでだよ?」
「公私混同したくないです。特に補佐とは」
つーん、とそっぽを向いて、コーヒーメーカーの前に立つ私の横に来て、ゆうに25センチ以上は差があるらしい身長を見せびらかしたいのか、彼は私の隣でにこにこと微笑む。
「久倉?」
「はい?」
「今度さ、メシ、食いに行かない?」
「………」
「変な事はしないって。…約束する」
「そう言った時点で下心、ある癖に…」
「ははは。ま、そう言うなよ」
ぽんぽん
彼は、何でもない事のように、私の髪に触れた。
けれど、コーヒーメーカーに視線を落としていた私は、気付かなかった…。
彼が、くすり、と意味心な笑みを零した事に。



