タイヤが路麺の氷を砕く、ザリザリとした音が聞こえる。
突き放されれば突き放される程、自分にうそを吐くようになって…そんな私をまるで闇から庇うようにして、搔き抱く彼。
「よし。着いたぞ」
「ここって…?」
「心配するな。ドレスコードなしの店だから。俺の知り合いがオーナーなんだ」
「そう、ですか…」
立派な外観に一瞬たじろぐも、彼のその言葉に安堵する。
「まぁ…今のお前ならドレスコードありの店でも大丈夫だけどな。なんせ俺の見立てなんだから」
ぽんぽん
温かな手の温もり。
もっと、溶かしてと願う。
待ち焦がれてる。
自分からは動けない癖に、貴方色に染められる日を…。
囚われたいと望んでる。
私ってこんなに欲深く…そして罪深かったのか…。
「じゃ、ちょっとここで待ってて?車置いてくる」
「え、あ…は、はい」
「ナンパ、されんなよ?」
「!されませんよ!」
「そーそー。そういういつもの水美がいいよ」
ぽんぽん
泣きたくなる。
どうしてこんなにも、貴方は私の気持ちを一ミリも見逃さずに拾い上げてくれるのですか?
本当に、気紛れに私と戯れているだけじゃないんですか?



