「みーなみ。何考えてんの?」
「………ちょっと昔の事を……」
素直にそう言ったら、彼は押し黙ってしまった。
「…………」
「瑛飛さん?」
「俺といるのに、他の事なんか考えてんな」
「それって…」
「うるさいよ?」
ふい…視線を逸らされたけれど、その横顔がほんのりと赤く染まっているのが見て取れる。
「……瑛飛さんて、ほんと不思議…」
「照れちゃ悪いか…好きな女の前じゃ必然的にそうなるもんなんだよ」
拗ねたようにも取れる口ぶり。
だけど、この場を楽しんでいるのは明白。
この雰囲気に飲まれては駄目…。
私は必然的にこの会話を断ち切り、別の話題へと転換することにした。
「瑛飛さん…」
「んー?」
「……お腹いっぱいピザ食べさせて下さいね?」
「……くくく。はいはい。水美は食欲に勝るものないよな」
「失礼ですね!人の事まるで滅茶苦茶食い意地張ってるみたいに!」
「だってピザ腹いっぱい食いたいんだろ?…その時点で食い意地、張ってんじゃん?」
「むぅ……悔しい。返す言葉が出ない……」
道中は本当の恋人のように、和やかだ。
こんな時間が続けばいいのに…。
私を掬い上げて、永遠に愛してくれればいいのに…。
手の平の上で、踊らされるような、そんな恋でもいい。
けして、『彼等』が言う程強くない。
一人では生きて行けない。



