ぎしり


誘惑たっぷりな、ベッドの軋む音。
だけど、俺は彼女を胸に抱いてにんまりと表情を崩したままでいた。


「……瑛飛さん。眠い、なんてうそでしょう?」

「なんで?そんなことないよ?」

「…うそ。だって…」

「んー?」

「さっきから、くすぐったい!」


相変わらずさらさらと触り心地の良い髪を撫でて、偶に触れるか触れないかの微妙なラインで頬に指を滑らせていたら、身を捩らせて彼女が抗議してきた。


「くすぐったいとこって、感じるとこなんだよ。ということは…この辺が水美の弱点、か?」

「や、も、もう!静かに寝て下さいってば!」

「えー?やだー」

「やだー、じゃなくて!本当に怒りますよ?」


人の腕の中で…。

そんな上目使いで拗ねたように、め!とされても、全然威力がないって事を…いい加減気付かないかな…この仔猫は…。


「……早く」

「え…?」

「早く、水美が俺のもんになればいいなー」

「…え?」

「いんや。なんでもないよ。んじゃま…惜しいけど、寝るとしますか。……朝起きたらいないとか悲しいからやめてくれよ?」

「いなくなるも何も、瑛飛さん家からの帰り方が…」

「ははは…それは、追々覚えてくれればいいよ」