「瑛飛さん、続けてですけど和食で大丈夫ですか?」
声を掛けられて、ハッとする。
「…あ、あぁ、冷蔵庫にあるもの適当に使ってくれて構わない」
「じゃあ、お鍋にでもしましょうか?今日、寒いですし…」
「ん。いいね」
…もしかしたら、神田の言う通りかもしれない。
なんだ、この和やかな新婚生活みたいな雰囲気は?
「水美、なんか手伝うことある?」
「じゃあ、大根おろしてもらえますか?」
「大根?」
「みぞれ鍋にしようかなー?なんて…」
だって、雪が降ってるから…。
そんな風に、ロマンチックな事を照れくさそう言われてしまわれたら、コンロの前にいるのにも関わらず、彼女にキスがしたくて堪らなくなる。
「だめ、ですよ?」
「ほんとに?」
「ほんとーに!」
めっ!と口唇を人差し指で押さえられて、俺は参ったとばかりに肩をすくめた。
この仔猫は、どんどん小悪魔になっていく、そんな気がする。



