しばらく抱きしめていると、梓ちゃんの口が開く。


「まさか、風神さんを好きになるとは思ってもいなかったからびっくりです。最初はホストクラブに良いイメージなんて、これっぽっちも無くて、私とは一生縁のない場所だと思ってました…でもあの時の私はボロボロの壊れた状態で、とにかく孤独な心を早く埋めたくて、いつの間にか足がホストクラブに動いてた。」

「でも指名して無かったのは、何で?」

「来たものの何していいか分からなくて、一向お酒を飲んでて記憶が無くなるくらい酔いたかった。そしたら風神さんが通りかかって…『君は独りで平気?俺が相手してあげよっか。』って言うんだもん、びっくりしちゃいましたよ…」

「俺、超軽い奴みたいじゃん。」

「“みたい”じゃなくて、軽いですから。」


今では笑い話にして、梓ちゃんと笑えるけど…


あん時は確かに、お互い最悪な印象だったな。