緋莉side
「…ん…。…痛っ…。」
体の痛みで私は目を覚ました。
…ここ…どこ?
周りを見回すが全く知らない場所だった。
ケータイの時計を見ると朝9時。
私は体の痛みに耐えながら、ゆっくり体を起こした。
体には包帯やら絆創膏やら、手当てをした痕があった。
ふとソファーを見ると誰かが寝ていることに気付く。
ソファーに近付き、寝ている人の顔を覗く。
…この人…誰だろう…。
近くで見ると、綺麗な顔立ちの男の人だった。
すると、男の人がゆっくり目を覚ました。
「…お、起きたのか。傷の具合はどうだ?」
「あ…あの手当てしていただいてありがとうございました。」
「…あぁ、手当てしたのは俺じゃなくて、俺らの姫だけどな。」
私は姫というワードに反射的に体がピクッと反応する。
「…姫…?」
「…あぁ。ここは刃龍の倉庫だ。そして俺はその刃龍の2代目総長の篠崎 煉だ。」
「刃…龍?」
氷蓮で姫をしていた私でも刃龍が何なのかわかる。
「全国No.1の刃龍の総長…?」
「…そうだ。俺のことわかるか…。さすがにNo.2の氷蓮の姫なだけはあるな。」
「…私が氷蓮の姫って知ってて連れて来たの?…あなたの顔は見たこと無かったけど、刃龍の名前くらいは聞いたことある。」
…ん?…ちょっと待って…。
なんで私は刃龍の倉庫に居るの?
考えていると煉が笑い出す。
「ははっ!お前、なんで刃龍の倉庫に居るんだろう…とか思ってんだろ?教えてやるよ。昨日、俺が刃龍の倉庫に向かってる時に、道端に倒れてるお前を見つけてな。傷がひどかったから俺のバイクに乗せて連れて来たんだ。」
そうだったんだ…。
…私、結局…氷蓮を追い出されたんだ…。
結局、誰にも信じてもらえなかったんだ…。
そう考えると、また目から涙が溢れた。
すると煉が自分の洋服で私の涙を拭ってくれた。
「おい、名前を教えろ。あと昨日何があったのかも教えろ。もし思い出して辛いなら、話さなくていい。」
煉のその言葉に、私は話そうか悩んだ。
でもとにかく誰かに聞いてもらいたかった。
話せば少しは気持ちが軽くなるような気がした。
私は煉に昨日あったことを全て話した。
「…そうか…。緋莉、辛かったな。俺はお前の言葉を信じる。」