『いいですか、あまり無理しないようにしてくださーー』
「突撃ー!!」
ノワールの言葉を無視して先程借りた武器の剣を、軽々振り上げてスライムに斬りかかった。
けれども私に気づいたスライムは、戦闘態勢を整えるべく私を観察していた。
喰らいなさい!必殺!!
「初めての剣の舞〜〜!!」
なんて言いながら振り下ろしたけれど、スライムは見事に剣を躱した。
おまけに私の大きく飛び上がったかと思うと、私の顔にべっとりまとわりつく。
「きゃあああ!!!」
悲鳴を上げると同時に、スライムが張り付いた感覚が一瞬にして消える。
恐る恐る目を開けると、ノワールが手のひらを前に突き出してやれやれと言った表情で私を見ていた。
どうやらあっという間に、ノワールが魔法で退治してしまったらしい。
『どうですか、魔物討伐は』
「ううう……難しいわね」
『先程のスライムは、瞬発力に長けたスライムで初心者向けではなかったですね』
「あのべっとりとした感覚はもう味わいたくない」
『ちなみにあのベトベトに毒がある場合もあったりもするので、気をつけてくださいね』
毒という単語に背筋にゾゾゾと何かが走る。
もしかしたらあのスライムに毒があったら、今頃私の顔溶けてたり……?
恐ろしいことが付き物であるということを悟り、渋々とノワールに武器を返した。
分かればよろしいとでも言うように、ノワールの顔は満足そうだ。
この件についてはノワールの勝ちということにして、次のやりたいことを探しながら街へと戻った。



