もう一度問いかけようと口を開いたが、その前にノワールが私を征するように口にした。
『なんでって、俺を呼んだのは紛れもなくお嬢さん。君だろう』
思いもよらない返答に、はい?と抜けた声を出すことしかできない。
私が、こんなへんてこな人を呼んだ……??
そんな記憶は一切ないし、そもそもノワールという存在を先ほど知った私が呼ぶわけがない。
「人違いだと思うんだけど」
『いーや。ちゃんと呼んだ。間違いなく俺を呼んだ。あ、いや、呼んだというのは嘘か。事実を言えば願った、か』
「え……?」
私が一体いつ、ノワールに会いたいと願っただろう。
サーカスに行きたいなどと願った記憶もない。
第一、こんなおかしな人に会いたいなどと願う人がいるのだろうか。
もしかして、新手の……詐欺??
そんな事を知り考えながら疑惑の目を向けていると、再びにんまりとした笑みを浮かべた。



