目が合うとノワールはそっと手を差し出してきて、私の手を取った。
「今日からこの世界をうんと楽しんで貰おうと思うんだけど、お嬢さんは何がしたい?」
「うーん……たくさんあるわよ?」
「そりゃあ、やり甲斐がありますね」
嬉しそうに言うノワールは、私を引き寄せながら扉の外へと足を運ばせる。
自然なそのエスコートに身を任せながら、私はやりたいことリストを頭で作成する。
美味しい物も食べたいし、どこか冒険にも出かけてみたい。
ここでのドキドキワクワクの体験も、時間の限りがあるはずだ。
ノワールをこれでもか!ってくらい振り回してやるんだから、空の旅で散々私を弄ってきた罰よ。
ワガママを言ってしまった以上、ここでの生活を思う存分楽しまなくっちゃ。
その前にぐぅとお腹の虫が暴れ出し、ノワールと顔を見合わせて笑いながら階段を駆け下りる。
「まずは腹ごしらえから行きましょうか」
「その提案に乗るわ。お腹ペコペコ!」
まずはこの世界を楽しむための準備を整えることなら始めようと、食堂へと向かった。



