ノワールが静かに微笑むと私の短くなった髪に、顔を近づけてそっと口付けた。
その動きがあまりにも自然で受け入れてしまったけれど、ようやく動き出した頭が離れろという指示を出した。
ガバッと立ち上がり、窓の外をもう一度眺めつつ熱くなった頬を冷まそうと必死に風に当たる。
い、今の一体何?なんで髪なんかにキスしたの??
しかもあんなに優しい表情なんか見せて……?
朝から心臓によろしくないことばっかりだ……ここは楽しむためにいるのであってこんな感情で掻き乱れるのはどうかしてる。
「はいお嬢さん、これ飲んで」
ノワールもベッドから立ち上がって、先程私に手渡そうとしていたティーカップを再び私に差し出した。
バレないように一つ深呼吸してから、ノワールに向き直ってティーカップを手に取った。
そっと一口啜り喉へと流すと、頭も心も落ち着きを取り戻し始めた。
「美味しい……」
「ここの宿主のスペシャルブレンド茶。街でも人気すごいんだよ」
「宿屋なのに?」
「人は得意なことをたくさん持ってた方が色々といい事あるんだよ」
ノワールに言われて、確かにと思いながらまた一口と飲み進めるといつの間にかティーカップは空っぽになっていた。
飲み干したティーカップを机の上に置いていると、ノワールの視線に気づく。



