何かが弾けるようなその感覚と共に、一気に頭の中に酸素が送り込まれてくるように記憶も全て戻ってきた。
くらくらしていると、すかさず青年ことノワールが私の背中をそっと支えてくれた。
「おはようノワール……」
「おはよう、お嬢さん。記憶戻りました?」
「……大体は」
記憶を遡ってみるけれど、思い出せるのはノワールとの酒飲み対決をふっかけた所までだ。
その後の記憶は一切ないと言ってもいい。
「昨日の宴はお嬢さんがヘロヘロになるまで続きまして。どっかの旅芸人の呪い師との変な賭け事でお嬢さんが負けて、魔法かけられてました」
「その魔法って?」
「今の様子を見る限り、軽く記憶をぐちゃぐちゃにしたって所。面白かったから止めませんでした」
賭け事って一体……私に利益あるようなことこの世界にある?
酔っ払った私の面倒を見るのは面倒だと友達が言っていたけど、本当のようで。
穴があったら入りたい気持ちでいっぱいになっていると、ノワールはニヤニヤしながら私の顔を覗き込んでくる。



