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知らない、でもどこか懐かしい香りに包まれているような感覚と共に、どこからか響き渡って聞こえてくる鐘の音にゆっくりと意識が覚醒していく。
うーんと一つ唸りながらも目を開けると、見知らぬ部屋が私の視界いっぱいに入り込んできた。
重たい体に力を入れつつ体を起こし、ぼーっとする頭のまま窓の外を見ていると、大きな翼を自由自在に操りながら空を駆けていく鱗の生えた生き物が窓の外を通り抜けていく。
通り抜けていった際にできた風がカタカタと揺らした窓にいつの間にか駆け寄り、そっと窓を開けた。
キラキラとした光の粒が太陽の光を吸収しては、その身を自由に泳がせていた。
そんな光景にポカンと口を開けてみることしかできない私は、首を傾げる。
あれ……?待って、私これ夢でも見てる?
いや……ん??
混乱してきた頭を抱えながら再びベッドへと腰かけて、頭の中を整理する。
まず大事な個人的な情報……私の名前は守連 咲、22歳。
よし、大事な記憶はとりあえず消えてない。
これで私は誰?一体誰なの?状態は、ダメなパターンだから、それはとりあえず回避。



