どんな仕掛けで場所が移動されたのか検討も付かないが、向こうが帰り道を分かっているのなら心配することはなさそうだ。
「それで?私に何か用なの?」
重要事項を聞かねば話は始まらないというように、私はどっしりと構えて腕組みをしてノワールを見つめた。
するとノワールは私とは逆にポカンとしたかと思えば、弾けたように笑い出した。
『あははっ!何を言うかと思えば、そんなハイセンスなギャグ吹っかけてこないでくれよ』
腹を抱えて笑うノワールに、投げる言葉もない。
ギャグなんて言ってもないし、やっぱりこの人の頭、相当逝っちゃってる。
面倒な人に絡まれたものだと、ノワールが笑いながらヨタヨタするのを見つめるしかできない。
『はー!久々にこんなに大笑いした。お嬢さん、なかなかやるね』
「そんなおかしな事、言った覚えないんだけど?」
『そりゃあ〜才能と誇っていい』
「ちっとも嬉しくないんですけど……」
全く……全然話が進まない。
これでは夕方までに家に帰ることは出来なさそうだ。



