林の中は日差しが当たらないせいか、一気に体温を持っていかれる。
歩いているうちにどんどんと体温が下がっていく。
少し薄暗い道に少しだけ怖くなった。
終わらせて褒めてくれる人がここにいると、そう信じていたから。
その人が突然何も言わずに行ってしまったら……なんて幼い子供が母親を探すように、立ち止まり辺りを見渡した。
「ノ、ノワール……?」
名前を呼んでみても返答がない。
まさかと、嫌な事を考えていると後ろからガサリと物音がした。
バッと振り返ってみても私の求めている人の姿はない。
どこに行ってしまったんだろうと、再び探し出そうと足を動かした時だった。
後ろから急に強い力で引っ張られ、後ろへと重心が傾く。
『おかえりなさい、お嬢さん』
聞き覚えのある優しいその声に、思わず上を見上げた。
仮面をつけて悪戯に笑うノワールがそこにいた。
胸の中に何か溶け込んで、冷えていた体が体温を取り戻していくようで、私は向きを変えそのままノワールに抱きついた。
『おっお嬢さん?!』
驚くノワールを無視して私はノワールに抱きつく力を強め、胸に顔を押し付けた。



