由希さんを含む職場の人たちは、はじめは司君のことを騒いでいた。

だけど、彼の性格を知ってしまってからはこの扱いだ。

こんな様子に苦笑いをしてしまう。





そんなこと、気にもしていない司君は椅子に座り、コーラを飲みながら私に言う。




「花奈ちゃん。

今日仕事終わったら、コート買いに行こうねぇ」




部屋は汚いしおっちょこちょいだけど、こんなところだけはしっかりしている。

そんな司君が大好きだ。

でも、



「もう、コートのことなんて気にしないで」



コートのお詫び以上に、私は司君に助けられているから。

司君はこうも私を助けてくれたのに……私がしたことなんて、パスポートを探しただけだ。

それなのに、当時は司君に恩を売っていた。

いかに自分が小さい女かと思い知る。