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その日、久しぶりに夢を見た。ファンタジーでもなんでもない、珠理と出会った時の夢だ。

俺たちが、今のような関係になったいちばん初め。


その日、俺は確か小学校4年生で、地元のサッカーチームの練習の帰りだったと思う。

迎えにきた母の車に乗って、今日はリフティングが何回できただの、ミニゲームで何点決めただの、そんな話をひたすら話している途中だったと思う。


もう、時間は夕飯の時間だったし、その日はもう真っ暗だったと記憶している。そんな中、1人でトボトボと歩く、ある少年の背中が目に入った。

本当に、本当に、偶然だった。

珠理の背が、当時からひと回りくらい周りより高かったことと、たまたま俺が窓越しに外の風景を見ていたから、目に留まったようなものだ。


『…母さん、ちょっと止まって』


必死に、お願いして車を止めてもらった。

どうしたの?と驚く母さんをよそに、勢いよくドアを開けて、その少年の元に走っていった。


『…何してんの!?』


真っ暗の道で、ろくに上着も着ないで、靴下も履かないで、裸足のまま、靴を履いて。

手には、小さい小銭入れ。少し、その身体は震えていた。


『近海、お友達なの…!?』

駆け寄ってくる母さんをよそに、着ていた上着を少年に被せた。何も言わなかった。


『俺、コイツ知ってる。5組のヤツ』


地元ではいちばん大きい学校だったから、4年経っても知らない顔はわんさかいた。珠理だって、話したことのない人たちの1人だった。

…でも、顔と名前は、知っていたんだ。

この少年が、美濃 珠理だって、ちゃんと気づいた。