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近海の前では、なぜか自分をまるごと見せることができる。

それに気づいたのは、いつからだろう。



「ちゃっちゃん、おつかれ」

「…あぁ、右京くん。熱、もう下がったの?」

「うん。おかげさまでね。あの時は本当にありがとう。助かった」


…一昨日、二次試験を終えた。

ものすごく寒くて、ものすごく天気が悪い日で、なんとなく暗い気持ちになるような、そんな日に。


「インフルエンザとかじゃなかったのね? 突然倒れるからビックリしたわよ」

「ハハ、うん。一応病院で検査したけど陰性。一晩寝たらすぐに下がったわ」

「…そう」


二次試験が終わって、試験の様子を伝えに塾に来たら、右京くんも来ていた。熱が出ていた状態で受けていたことを、報告しに来たらしい。

お前は本番に弱すぎだだの、自己管理がなってないだの数々のことを突っ込まれたらしいけど、最後にはよく頑張ったと認めてもらえたらしい。

右京くんは、頭がいい。あたしより絶対に良い点は取れているし、学部の偏差値もあたしのところよりも高い。

…今、近海がいる学部だ。


難しいけど、安泰だって言われてきた。ちゃんと問題は解ききったっていうし、普段からできていたから、試験に落ちるなんてことも、あまり考えられないけど。

きっと、彼も不安なんだ。ものすごく。


「…ちゃっちゃん」

「ん?」


帰る準備をするために、マフラーを巻いた。
これからは、初とお出かけをする。


「…ちゃっちゃん、元気ないね。なんかあったの?」


それなのに、背の高い右京くんに、出口を塞がれてしまった。