「キミの名前は?」



「美風 羽瑠です」



「ハルちゃんね?……それで、これどこ持ってくの?」



「えっと、職員室まで」



平然と話しているけど、本当はやっとハルのことを名前で呼べるのが嬉しくて、ニヤけてしまいそうな衝動を必死に抑えるのがやっとだった。



「ん、わかった。それも貸して?」



「へっ?」



「そんな、夏くん!私が頼まれたものだし、いいよ」



「またぶつかってバラまいたら嫌だろ?」



「そうだけど……持たせちゃって、ごめんなさい」



「ごめんじゃなくて、ありがとうって言ってほしいんだけどな、ハル」



「……っ」



いちいちハルのコロコロと変わる表情がたまらなく愛おしくて、もっと意地悪してみたいなんて。



「ありがとうは?」



「あ、ありがとう」



「ん、よく出来ました」



……そう思ってしまった。