「大丈夫?」
「……え?」
「自分からぶつかってきておいて、それはねぇよな」
「優しいんですね」
「目の前に困ってる人がいたら普通助けるだろ?」
同じ学年なのに敬語で、はじめましてっていう対応で俺たちが本当は入学式の日にも顔を合わせて、少しだけだけど話したことがあるっていうのは、忘れているらしかった。
「キミは何組?」
本当は知っているけど、そう問いかける。
「えっと、1年A組です」
「じゃあ隣だね。俺は1年B組」
「貴方も1年だったんですね」
「俺は一ノ瀬 夏(いちのせ なつ)。貴方じゃなくて夏って呼んでよ」
貴方なんて、ハルが俺のことを呼ぶから、俺は名前で呼んで欲しくて、そう伝える。
好きな奴には、名前で呼んでもらいたい。
誰だってそう思うだろ?



