「えっ?な、夏くん、詩乃が……」
「ん?もしもし」
詩乃が夏くんに変われと言うから、顔は合わせず手渡す。
『もしもし、詩乃です!ハルのことお願いしますねっ』
「もちろん。今日は楽しませますよ、ハルのこと」
もう、詩乃ったら何言ってるの、ばかーっ!
その後すぐに詩乃は用事があるからごめんねと切られてしまった。
用事なら仕方ないけど……ふたりきりなんて!
今までだってふたりきりの時はあったけれど、学校と外じゃやっぱり違う。
学校で会うよりもドキドキする。
「もう少し落ち着いたら行こうか」
「……ごめんねっ」
「なんで謝るの?せっかくのデートなんだからハルに楽しんでもらわないと」
「……っ」
本当にこの人は優しすぎる。
だからこそ甘えてしまう。
「ハル、手繋いでいい?」
返事なんてできなくて、こくんと首を縦に振ると、夏くんはそっと優しく手を握ってくれた。
ドキドキするのに、安心する。
そんな夏くんのことが、やっぱり大好きなんだ。



