「じゃあなんですぐ逃げちゃうの?」
「な、夏くんと話してたらドキドキしちゃうから逃げてるわけじゃ……はっ」
もし何かあるならちゃんと教えて欲しい。
そんな思いで問いかけたのに、ポロリとこぼれてしまっていたハルの気持ちに俺はドキッとする。
「へぇ〜。ハル、俺にドキドキしてくれてるの?」
「ねぇ、どうしてドキドキしちゃったの?」
俺にドキドキしたって……
可愛すぎないか?
顔を真っ赤に染めるハルが可愛くて、もっといじめたくなってしまう。
もっと俺にドキドキしてしまえばいい。
「じゃあ、こうしてもドキドキしない?」
「夏、くんっ……」
静かな図書室に机のきしむ音だけが響く。
そんな空気がさらに俺の気持ちを引き立てる。
本しかない図書室の中で、ハルだけが特別に色づいているように。
ただただ俺の世界にはハルしか映らない。



