澪が慌てて止めに入るが、桜は正気を取り戻すような感じではない。完全に、意識を乗っ取られてるみたい。

「ちょっ、桜ぁっ」

私も我に返って急いで桜の腕を花恋から離す。でも、けっこー腕力が強いみたいで、びくとも動かない。つ、強っ!

このままじゃ、ヤバイ!と、思ったその時

「はあ、はあっ」

ドア越しに息切れした女の子の声が微かに聞こえた。うん?この声・・・・・・

「花恋・・・・・・」

「ふえぇっ、愛梨ぃ〜」

「良かった、無事でしたのね」

点滴をぶら下げながら、愛梨が登場。愛梨なら、桜を止めてくれるはず!と思ったのに

「あなたのせいで、私が怪我をしたのよ?」

「あ、愛梨まで・・・・・・!」

愛梨の目も、茶色い瞳から真っ黒に変化していた。

「あーもー、やってらんねーよ」

突如桜は花恋から手を離した。けほけほと軽く咳き込む花恋を、澪が背中をさすっている。

「行こうぜ、愛梨。こいつらと一緒とか、虫酸が走る」

「そうね。私の病室に来て」

「ああ」

愛梨と桜は、二人揃ってこの部屋を出ていった。

残ったのは、沈黙だけだった。