それらしい期待させる言葉はくれても、未だに核心には触れない樹。

それはわざとなのかもしれないけど……


少し微笑みながらあたしを見下ろす樹に、あたしは戸惑いがちに聞く。


「ねぇ、樹は……あたしが好きなの?」


あたしの問いに樹は黙って……そして目を逸らす。


「瑞希は?」

「え? ってゆうかあたしが聞いてるんだけど」

「おまえが言ったら言うよ」

「なにそれっ! そんなのズルい……」


樹の言葉に、ムキになって言い返そうとして……でも、用意した言葉は最後まで言えなかった。

……一瞬だけ重なった樹の唇に邪魔されて。


触れるだけのキスをしてから、樹は何事もなかったかのようにあたしを見下ろす。

そして、あたしの手を握った。


「……やっぱりズルい」

「……そりゃどうも」


あんな一瞬のキスのせいで、繋がれた手のせいで、あたしはそのまま顔を上げられなくなってしまって……

それでも文句を呟くと、樹がふっと笑みを落とした。


だけど、握られた手があたしの体温と交じり合っていくのを感じて……あたしは樹の無言の挑発に促されるように、ゆっくりと口を開いた。



「……好き」

「オレも」


言った瞬間に返された言葉。

だけど、それに納得できないあたしはまたしても樹に食ってかかる。


「ズルいんだってば! ちゃんと言って!」

「なんて?」

「……~~っ! だからっ……」


ぐいっと引っ張られた手に、あたしは樹の胸へと軽くぶつかるように引き寄せられる。

そして、背中には樹の手が回って……


そうされてしまうと、あたしはもう反抗どころじゃなくなってしまって……

憎まれ口なんか出てこなくて。


「うん。……なんて?」


あたしをギュッと抱き締めながら、樹があたしの耳元で聞く。

その声に身体中がキュウっと苦しくなって……あたしはやっとの思いでその言葉を口にした。




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