『樹も逃げてないでちゃんと向き合えよ! あたしも帰ってちゃんと向き合ってくるから』
『気が向いたらな』
返ってくる樹の言葉が、嬉しくてたまらない。
こんなパソコンの文字ですら、樹のものだと思うと愛しくて仕方ない。
本当にこれで最後なんだ。
そんな想いが、あたしをどうしょうもなく切なくさせて、寂しくさせる。
あのベッドで眠ることも
あの部屋に入ることも
樹と笑い合う事も
もう、ないんだって思うだけで、押しつぶされそうに苦しい。
一気に込み上げてきた感情に、あたしは苦しくなった胸をぎゅっと抑えながらキーボードを打つ。
そして打ち込んだ文字を眺めて……送信しないまま、そっとブースを出た。
……隣の樹に気付かれないように。
『アンケート、覗き見しちゃった。
大人しくて清楚な子が好きなんだって? あたしと正反対だね。
それなのに、3日間も部屋に置いてくれてありがとね。
もう、行かないから安心してください。
ねぇ、樹。
樹との約束ね……あたし守れなかったみたい。
絶対守れる自信があったんだけど……無理だったよ。
だから、お金は要らないよ。
だから……あたしも謝らないでいいよね?
ってゆうか、謝らないから。
あまのじゃくなあたしに、あんな約束事持ちかけた樹のせいだもん。
だから、謝らないよ。
じゃあね。樹。
本当にありがとね。 瑞希』
こんなあたしのわがままに付き合ってくれてありがとう。
いっぱい笑ってくれてありがとう。
暖かいものをいっぱいくれてありがとう。
樹との時間が、すごくすごく楽しかった。嬉しかった。
樹、ありがとね。
本当に、ありがとう……
大好きだったよ。
気付いたら……すごくすごく好きだった。
自分でも信じられないくらいに、当たり前にあたしの気持ちの中に樹がいた。
樹で、いっぱいだった……
ばいばい、樹。
すごく、すごく……大好きだったよ――――……
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