ネカフェに着いたあたし達は、1人用のブースを隣同士に借りてそれぞれ個室に入る。
別にあたしは用もなかったんだけど……なんとなく。
だけど結局調べる事もないあたしは、仕方なくネットサーフィンしていつも友達とかとしているチャットサイトを覗いたりして時間を潰した。
そして……
思い立った考えに、樹のブースと繋がっている小さな木窓を開けて樹に声を掛けた。
「樹、このチャットルーム来て」
「は? なんでだよ」
「いいから」
小声で言うと、樹はあたしのパソコンが映し出している画面を見て……自分のパソコンを繋ぐ。
たくさんある中の1つのチャットルーム。
そこに樹が入室した事を確認してから、あたしは木窓を閉じてキーボードに指を置いた。
『樹、3日間ありがと』
その言葉を打ち込むと、少ししてからこのチャットの意味を理解した樹がキーボードを叩く音が聞こえた。
『なんだよ、急に。瑞希がお礼言うとか気持ち悪いな』
『直接じゃ絶対言えないから言っておこうと思っただけ。もう最後だし』
『どうせなら直接言えよ。お礼とかはちゃんと顔見て言えって親に教わったろ』
パソコンの中でなら、いつも通り憎まれ口が叩ける事に気付いて、あたしは少しだけ安心した。
これなら、いつも通りのあたしで別れられるって思って……
『本当はね、3日間お兄ちゃんからいっぱい着信とかメールがあったんだ。
だから、それで許してやる事にする。3日間あたしを心配してくれたんだから……帰ってちゃんとおめでとって言うよ』
『そっか』
『えらいでしょ』
『まぁ、普通だけどな』
樹の言葉に、小さく微笑んでから再びキーボードを指で弾く。
何気ないチャットが、すごく意味のあるもののように思えて……なかなか言葉が選べない。
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