『Q。12 好きな異性のタイプは?』

「A。 大人しくて清楚な子」

『Q。13 嫌いな異性のタイプは?』

「A。 煩い奴。可愛げのない奴」


覗き見てしまった樹の答えが、胸に刺さる。


約束以前に、あたしなんて樹の眼中じゃない。

その事実が、たったそれだけの事実が……胸に刺さって深いキズを作った。



 ※※※


「ところでさ、おまえは誰に片思い中なんだよ」


お風呂から出たあたしに、樹が思い出したかのように話しかけてきた。


……そういえば、今朝だったんだっけ。

こんな気持ちに気付いたのは。……1日で失恋って、あたしはどこまで落ちればいいんだろう。

せっかく問題は解決しつつあったのに、またしても落ち込む原因を作ってどうするんだろう。

……しかも、もしかしたら今までよりも大きな原因かも。


「瑞希? 聞いてんのか?」

「あぁ……聞いてる聞いてる。別に誰でもいいじゃん」

「気になるだろぉが」

「気になるって……あたしの周りにいる男子なんて樹誰も知らないじゃん」


気になる、なんて樹が言うから一瞬詰まってしまった言葉。

それを悟られていないかと、樹の表情を盗み見ると樹は不機嫌そうにこっちを見ていて……合ってしまった目が気まずい。

だって……なんかいつもになく真剣な顔で見てくるから。


「……なに?」

「別に……ただなんとなく」

「ただなんとなく、なに?」

「別に」


はぐらかすような樹の態度に口を開こうとしたけど、樹は立ち上がりお風呂に向かってしまったから、あたしの文句は言葉にされる事はなかった。

……別にそこまで言いたい事があった訳じゃないけど。


ただ……言葉の先が、ちょっとだけ、本当にちょっとだけ気になっただけ。

気になって……期待しちゃっただけ。


本当にバカで嫌になる。


その日は、絶対に眠れない事が分かってたからかなりの量のお酒を飲んだのに……結局あたしは一睡も出来なかった。


好きを意識してしまったあたしは、好きな人の隣ですやすや眠れるほど図々しくないらしく。

背中に感じる樹の体温を感じながら、ずっと動けなかった。



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