私は自分の泣き声で目を覚ました。


夢の中でも泣いていたからだろうか。



ベッドには中村先生が座り、私の背中をさすってくれていた。


「偉いね、ちゃんと思い出したんだね」


「先生……美花がっ……」


美花が居た。


生きていたのに。


今では二度と会えない美花の事を思い出し、涙が溢れる。



「美花さんに会えたのね、良かったわ」


私は涙を拭くと、先生のほうを向いた。


「美花、久しぶりに見ました……」



その夢は事故の日のことだったけれど、美花が夢に出てきてくれた事は素直に嬉しかった。


陸人も、出てきてくれた。


すっかり忘れていた、あの日の記憶。



先生も頷いてくれる。


「でも辛かった…美花、私の目の前で…」


あの、赤い雪の元で。


また涙がこぼれそうになり、必死で抑える。


先生が何か言おうと口を開いた時、


「中村先生…?」


とカーテン越しに斎藤君の声がした。


口調からして、困惑しているようだった。


「あ、忘れてたわ」


先生は苦笑しながらよっこらしょ、と立ち上がり、


「戻れそうだったら言ってね」


と告げ、斎藤君の方へ行ってしまった。


残された私は起き上がり、ゆっくりと窓の方に目を向けた。


まだ雪が降っている。


けれども今は、1年前の記憶と重ならなかった。