「……誰?」



その言葉は彼女を地獄に落とすには十分すぎた。



少女は、記憶喪失になっていたのだ。



そうとわかった彼女は、少女の手を離して後退りをした。



「覚えて、ない……自分のことは、わかる……?」



彼女の質問に、少女は少し考える。


そして、首を横に振った。



「全部、覚えてない……そっか……」



彼女はそう呟いて、病室から駆け出した。



少女はなにが起こったのかよくわからないまま、あたりを見渡した。


徐々に自分が病院にいることを理解していく。


だが、自分が何者なのか、どうして病院にいるのかわからなかった。



することもなく、しばらく窓の外を眺めていると、戸が開いた。



入ってきたのは医師と看護師、そしてスーツを着た強面の男だった。



医師と看護師は診察をし、病室を出た。