眠らせ森の恋

「……社長にお茶持ってっていいですか?」

「どうした?
 社長が持ってこいと言ったのか?」

「言われてないんですけど、持ってっていいですか?」
と言って、何故だ、と問われる。

「持って行きたいんです」

 どんな理由だ、と思われたことだろう。

 そんな理由で社長にいきなりお茶を持っていく秘書は居ない。

 だが、つぐみは西和田の椅子の側にしゃがみ、手招きをする。

「お前、また田宮に睨まれるぞ」
と言いながらも、西和田は身を屈めてくれた。

 つぐみは小声で叫ぶ。

「日曜、うちの親が社長のうちに来るって言うんですーっ」

「社長のうちっていうか、お前のうちだろうが」

 だが、西和田は溜息をつきながらも、内線電話を持ち上げていた。

「社長、お茶はいかがですか」

 なんか変な電話だな、と思う。

 すごいお茶か、お茶菓子でもあるから、どうですかって感じだ。