……無駄。

そう言ってしまえばそれまでだが、この先この経験がどう人生に影響するかは分からない。

いい方へ向かうかもしれないし、逆に言葉通りの結果になるかもしれない。

要は先のことなど、今時点で答えはでないわけで。


それにただ侍女をやっているわけでもないし、それなりにお給金と王妃様の新作を読める特典もあり、目的なく仕事をしているわけではないから、やるかやらないかは私の自由だろう。

「そんなこと今は分かりません。ただ侍女を勤めているのには理由がありますから。私はその理由のために職務を全うするだけです。それこそ本当に無駄だと感じたら、その時点ですぐにこの職を辞退しようと思いますので、ご安心を」

「……ふーん」

興味があるのかないのか、いまいちつかめない返事。

顔がボサボサの髪の毛で隠れているから、余計に分からない。


王子はなにが聞きたかったのだろう。

結局はなんだかんだ理由づけて、私に辞めて欲しかっただけなのかもしれないが。


だがせっかくここまでやってこれた。

悩むこともたくさんあるが、きっと悩みぬいたぶんだけ、素晴らしい結果が待っているのではないかと思う。

そう思わないとやっていられないから。


王子はまたモソモソと食事を摂り始める。

そんな王子を横目で見ながら、私は止めていた手を動かした。