私は調理場へと向かった。

調理場では3人ほどのコックが、すでに昼食の準備を進めていて、慌ただしく動いている。


「すみません、ライト王子の料理は――……」


忙しそうなときに声をかけるのは憚られるが、いかんせん初日であるゆえ仕様が分からない。

申し訳ないと思いつつも、声をかけた。


「ああ、あなたが新しいライト王子の侍女かい?そこに置いてあるから適当に持ってってくれ」


その中のひとりが、片手で鍋を持ちながら手前にあるテーブルを指す。

そこには出来上がった料理が4皿ほど置かれてあった。


「ありがとうございます!忙しいときに申し訳ありません!」

「いや別に構わないよ!まあ頑張ってな!」

そう言いながら私に向かってニコリと笑って、器用に鍋を回していた。


やはりライト王子が難儀なお方であることは、ここにいる誰しもが周知しているようで、セリスだけでなく誰にでも最後は『頑張って』と声をかけられる。

まあ頑張ってと言われたところで、私にも限度はあるのだが。

周りから言われるからこそ、なおさらやってやろうじゃない!という気になるのもたしかだ。