そう言えるって羨ましいわあ……。
私なんて、どうすればいいの。
あんなどんよりとした王子の侍女になって、楽しいなんて思えるはずがないのに。
「あなたも災難よね。聞いたわよ、王妃様に懇願されたのでしょう?」
「え?ええ、まあ……」
「私、ここへ来て半年ほどになるけれど、ライト王子を見かけたのは一度か二度?滅多に人の前に出てくることのないお方だから、いったいなにをしているのかまったく分からないのよね」
「そ、そんなに、表に出てくることが稀なお方なのですか?」
「ええそうよ。前に侍女をしていた方も、部屋の前で門前払いされ続けて匙を投げちゃったって感じ。そりゃあ仕事が全うできないのだもの、辞めて当たり前よね」
前の侍女ができなかったことを私がやれと?
無理よ。魔法使いじゃあるまいし。
絶対できっこないじゃないの。
「ともあれとりあえず仕事の内容だけは教えるわ、でもいくら王妃様のお願いとはいえ、無理なら無理だと、早めに判断した方が賢明だと思うけれどね」
「そう……ですよね。私もそう思います」
その話を聞く限りでは、私も同様の仕打ちをされるのだろう。
……しかし、私には王妃様の新作を真っ先に読める特典もついているわけで。
ああ、悩ましい。
その特典さえなければ、早々に辞めて帰るのに。