それはまさに私が夜会での、あの出来事とそっくりな場面だった。
他の男と踊る主人公の令嬢を救い、そこで王子は令嬢に愛の言葉を捧げる。
王子の本当の気持ちを知った令嬢は心打たれ、その愛を受け入れる……というもの。
「王妃様はこれを書いて、思いついたのね。あの時どうしても読めなかったから、全く気付かなかったわ。ああもう、王妃様にはしてやられたっ!」
「まさか、だな。よくまあ、俺たちは上手くこれと同じように動いたもんだ。……単純なのかな」
単純……。
確かにお互い恋愛に対して未熟だったから、仕方のないことなんだけど……。
「まあでも、いまさらいいんじゃないか?だって、結果的には俺たちこうやっていられるわけだし」
「え?……ええ。それは、そうなのですが」
王妃様のしてやったりな顔が浮かび、思わず悔しさを滲ませる。
こんな部分にヒントを隠しているなんて、やっぱり王妃様は策士だわ。


