そんな忙しい毎日の中、ほんの少し訪れたふたりだけの穏やかな時間。

王子は私の肩を抱きながら淹れたてのお茶を飲み、私は王子に寄りかかりながら、前に王妃様から渡された物語の続きを読んでいる。

あの時読み進められなかったお話も、王子と結ばれてからというもの、また読もうという気になったのだから不思議なもの。

……とはいっても、これまでずっと慌ただしい日々を過ごし、なかなか読む時間が作れず、この日ようやく手に取ることができたわけだが。

相変わらず物語の中の王子は、隣にいる王子と重なってしまうが、あの時の感情とは違って微笑ましく思える。

一枚ずつ読み終えた紙をめくり、物語はいよいよ終盤へと差し掛かった。

大きな展開を迎え、その時、私は大きな声を上げる。


「――ええええっ!?」


突然の叫び声に、王子は身体を大きく跳ねらせた。

しかもタイミングよくお茶を飲んでいたところだったから、お茶は少し零れるしむせてしまい、もう散々である。

「ど、どうした!?」

「……やられたわ」

私は読んでいたところを王子に差し出した。
王子はそれを受け取り、読み始める。

「これは……」

「なんてこと……。まさかこんな展開が、これに書かれていたなんて」