全身の力が抜けて、その場にへたり込んでしまいそうになるのを、王子が咄嗟に受け止めてくれた。


私の口から出てくるのは、乾いた笑い。
安心と呆れと、色んな感情が入り混じった笑いである。


……って、ちょっと待って?
じゃあもしかして、あのことも?

あることに気づき、リフィト王子に問う。


「ええとリフィト王子?もしかしてですが、バルコニーでの発言も……?」

「あー……、うん。ゴメン。ちょっと煽ってみたんだ。動揺したけど、兄さんへの思いは確信したでしょう?瞳は嘘をつかない。僕にはララの気持ちが手に取るように分かったよ」

「な……」

つまり、リフィト王子が私を好きだという話は、その返答を聞くに嘘だったということがわかる。


なんなのこの親子……。
いくらお互いの気持ちを知るためとはいえ、こんなことするなんて信じられない……。


嘘だったことにホッとしつつも、でもほんの少しでも意識し悩んでしまった私が馬鹿みたいだと、無性に悔しくなった。


「まったく母さんたちは悪戯が過ぎるよ。そういうところが嫌だったんだ俺は……」

王子はそんな私を支えながら、呆れた表情を浮かべる。
無理もないだろう、王子もまた私と同様、騙されていたんだもの。

「でも私は嬉しかったわ。自分で自分のことを決められる勇気があると分かったから。この何か月かで、とても成長したわね」

「……ああそうだな。まだまだ未熟ではあるが、その意志の強さ、必ずや素晴らしい国王となるだろう。これで私たちも安心して隠居出来るな」

「ええそうねアナタ。まだその座を明け渡すには早いけれど、でも不安なことはなくなったわね」

「だからってさあ……」

とはいえ、心なしか王子は嬉しそうだ。