気がつけばエントランスには、父と母はもちろんのこと、屋敷で働く使用人たちもこぞって私を見送りに集まってくれていた。
ふと寂しさが私を襲う。
このときばかりは胸がぐっと締めつけられ、目頭が熱くなる。
でも悲しいお別れなわけじゃない。
泣いてしまうのは心配をかけてしまうだけだ。
そう思って、必死に堪え笑顔を浮かべた。
「――ではみなさま、行ってきます!」
泣きそうな自分を吹っ切るように、大きな声で再度告げると、私は玄関の前に止められていた馬車に乗り込む。
そしてバタン、と馬車の扉が閉められた。
車内にひとりになったとき、その緊張は自身の鼓動を早めていった。