――その瞬間。


「そこまでだ」


そのひと言と共に、私の身体が勢いよく後ろへ引っ張られた。

そのまま身体は弾力のあるものに当たり、そして私の体にリフィト王子のものではない、別な手が回される。

動いていた時が、一瞬止まったような気がした。

その光景に、辺りはざわめく。

なにが起こったのか理解できない。
突然のことで私はもちろん、目の前にいるリフィト王子も、ぽかんとしてしまったほど。


「誰が踊っていいと言った?俺の断りもなく、勝手な行動は許さない」

その声は低く、怒りが篭っている。
しかし、とても聞き慣れた声だった。

恐る恐る、顔を後ろに向ける。

そこにいたのは紛れもなく王子。
眉間に皺を寄せて、これまでにない厳しい表情を浮かべた王子だった。