国王一家が壇上に勢ぞろいしたところで、国王様が一歩前にたち、参加者をゆっくりと見渡す。

「急な夜会にも関わらず、これだけの参加者がこの場へ集まってくれたこと、大変感謝する。今日はこれまで長らくある事情から皆の前に姿を出すことのなかった我が長男、ライトのお披露目を兼ねての宴でもある。ライトはまだ未熟ながらも志は高く、いずれ我が国の明るい未来を導いてくれる存在となるだろう。どうか暖かく見守ってやって欲しい」

その言葉の後、王子は私たち参加者に向かって、深々と礼をした。

普通ならば、王族の人間が私たちに向かってこれだけの一礼をすることはない。
きっと王子なりのけじめと決意の表れなのだろう。

王子の行動に周りは一瞬騒然となったが、自然と周りからは拍手沸き起こった。


それは少なからず周りが、王子を次期国王として認めたからのものだろう。

温かい拍手は長く続いた。
王子はその拍手が止むまで、ずっと頭を下げ続けていた。


それから歓談の時間へと入る。

ゆったりとした音楽が始まり、中央ではその音に合わせて踊る者、それを横目に歓談する者、皆それぞれに宴を楽しんでいた。

私はというと、人の多さに気疲れしバルコニーへ避難していた。
大広間の息苦しさから一転、外の空気はひんやりとしていてとても清々しい。

外の風にあたりながら、窓越しに大広間の中を見つめる。

王子の周りには人だかり。
初めての参加ということもあり、挨拶をする人間で溢れかえっている。

近くに行くなんてできない。
遠くから眺めるのがやっとだ。

辛くなるから見なければいいのに、自然と私の視線は王子を追っている。

ダメね、私。相当重症だわ。



ため息は、ひんやりとした空気に混じり消えていく。
私のこの思いもいずれ、こんな風に消えていくのだろうか。