「本当はあなたが将来の伴侶を連れてくるときに、着てもらおうと思って作らせたものだったけれど。仕方ないわよね、城に上がるなんてそうないことだもの」


そのドレスを着た私を見た母は、少し残念そうに言う。

「そんないつ来るか分からない日を待つより、今日で良かったじゃないお母様。思ったよりも早く着てくれて、きっとこのドレスも喜んでいると思うわ」

「本当にあんたって子は……」


母は呆れたようにため息を零す。

だってしょうがないじゃないの。
私の理想の男性がいないんだもの。


そして間もなく、城から使いの馬車が到着したと、私を呼ぶ声がする。

母と共にエントランスへ下りると、そこには城の使いの者と父が話をしていた。


「おお、ララ。とても綺麗じゃないか。馬子にも衣裳とはこのことだな」

「ほんっとに余計な一言が多いわね、お父様。……では行って参ります」

「うむ、くれぐれも失礼のないようにな。落ち着いたら手紙をくれ」

「ええもちろん。お母様もお元気で」

「あなたもね。身体に気をつけてしっかりとやるのよ」