こんなことで、気づく自分はどうかしている。

でも王子にされたこと、本心は嫌ではなかったの。
ただ、こんな形でされたくなかったってだけ。

できることなら、もっと別な、なにか暖かいものに包まれた空間で、そしてお互いの気持ちを分かって、それで結ばれるならとても幸せだっただろう。



――けれど、そんな日は訪れない。



それを考えた時、とても胸が苦しくなった。


苦しくて、辛くて、そして悲しくなって。
それでいて、気づかされた。


私はいつの間にか王子のことが好きになっていたのだと。


……いや、気づいてなかったわけじゃない。気づいていながら、それを認めようとしなかっただけ。

だって、彼は王子で私は侍女で。

その言葉で、私が王子を好きになるなんて、あり得ないことだと言い聞かせていたから。

好きになっても報われない。
その先に望む未来なんて、ないのだから。


「うっ、あああっ」


くぐもった嗚咽が、部屋の中に響き渡る。

認めてしまった、自分の思い。

でもそれは誰にも言えない。
だから、泣いて泣いて。

自分の中で消化するしか、ほかなかった。