「それが、王子の役目でもあります。仕方のないことです」
「他人事だから簡単に言うね。俺が今、どんな気持ちでいるか知らないんだろうな」
「いえ、そのお気持ちは十分に分かります。しかし、どうにもならないこともあるんです。生まれ持った命(さだめ)は変えることはできません」
王子は私を睨むように見つめた。
刺すような瞳が私の心を抉るようで、ズキリと痛みだす。
「俺に自由がないことが俺の命だっていうのか?仕方がないと諦め、親の言うことに従うのが正しいと?」
「貴族である以上、避けられないことですわ。王子には国の未来がかかっている。この国の安定と発展を維持し、そして人生の先駆者でもある国王様と王妃様に従うのは、間違いではありません」
「ハッ……、随分と面白いことを言うな。なにが"国の未来がかかっている"だよ。俺にそんな素質がないのに、勝手にそんな責任を被せやがって。俺がどれだけ苦しんでいたか分かるか!?俺がどれだけっ……!」
やりきれない怒りは、目の前のテーブルに向かった。
ガン!と大きな音をたて、テーブルが動く。
あまりの感情的な行動に、咄嗟に王子の体にしがみつく。
「お止めください、王子!物に当たったところでなにもなりませんわ!」
「じゃあどうしろと言うんだ!?どこにもぶつけられないこの思いをどうしたらいいんだよ!」
そう叫び、王子は私の腕を掴むと強く引き寄せた。
その力に抗えず、引き寄せられるようにソファーに倒れ込む。


