裏庭には、一階に下り廊下を真っ直ぐ歩いた先の裏口から出ることができる。

その際に見張りの兵士や使用人たちとすれ違ったが、みな同じように驚きと戸惑いの顔を浮かべていた。


中にはまったく王子の顔を知らない者もいて、一瞬怪訝な顔で王子を見るが、私がいることとその後ろに護衛の兵士がついていることで、そのお方が王子と分かり慌てて一礼する、といった姿もちらほら。


そんな王子も、すれ違いざまに軽く会釈するが、動きはぎこちない。
これまで人との関わりが少なかったから、仕方ないこととは思うが。


裏庭へと出る。

草原を思わせるような緑鮮やかな芝が一面に広がり、右手奥には木々が集まる林のような場所がある。

そして反対側には馬舎があって、柵に囲まれた中で馬たちが暖かな日差しの下で気持ちよさげに過ごしていた。

表庭と比べると華やかさはないが、田舎の風景を思い出させ和やかな気持ちになれるような場所だった。


王子は舗装された道を歩き、迷いもなく林のほうへと向かう。
私と兵士たちはそれに続いて歩いた。

「あの場所は小さい頃、よく遊んだところなんだ。リフィトと一緒に秘密基地を作ったりなんかしてね。まだあるかな?と気になって行ってみたくなったんだ」

「左様でございますか」

幼い頃はそれなりに活発な子であったらしい。
それが時を経て引きこもるようになるのだから、不思議なものだ。

林の中へと入る。
そう人も入ることがないのか鬱蒼と草木が生えている中を、王子はかき分けて進んでいく。

「気をつけて、中には棘のあるものも生えているからね」

「かしこまりました」