着替えを手に、王子の部屋に向かう。

扉を叩けば、即座に王子の声が返ってくる。今日も私が起こす前に、自ら起きられたようだ。


「おはようございます、王子」

「おはよう、ララ。今日もいい天気だね」

小奇麗になった王子の顔から、緩やかに弧を描いた表情が浮かんでいる。
これまでの陰な雰囲気はどこへやら、すっかり爽やかな空気が辺りを包んでいた。

「今日の着替えです、どうぞ」

「ありがとう。今日は少し派手な服だね」

王子は服を広げるなり、そう漏らした。

「お顔も綺麗になったことですし、これからは外に出ても差し支えのない、王族服をと思いまして。次は少しずつ外に出る練習です。外気に直接触れ感覚を戻し、いずれは他の方との関わりを増やしていかないといけませんから」

「そ、そうか。……そうだよな」

私の言葉に、王子は少し身構える。
やはり長らく部屋に閉じこもっていたからか、外界へ出ることに抵抗があるようだ。

が、しかしここで怖気づいてはいけない。

外見が変わったところで、中身が変わらなけば、それは変わったとは言えないから。

王子の役目、しいては国王の役目とは、広く外を見渡し国民の声に耳を傾け、堂々たる言葉をかけてやること。
それができなければ、なんの意味もない。

「でも、焦らずゆっくりと進んでいきましょう。王子のペースで確実に行くのが良いと思いますわ」


そう告げ、私は食事を取りに一旦部屋を出る。