「凌……、よく生きていてくれたわね……」





操様は声を震わせながら寿永隊長の顔を覗き込むと、頬に手を当てた。





「暖かい……。生きてる……私の大切な息子は……凌は生きてる……」





彼女の目には涙が浮かび、顔には笑みが浮かんでいる。





ふと、彼の頬に触れる操様の手に雫が落ちた。





それは泣くことを、泣く意味を理解していなかった彼が流したモノ。





今まで向けられることのなかった母の愛を受け、寿永隊長は涙を流していた。





よく生きていてくれた──。





誰よりも言って欲しかった人にその言葉を言われ、寿永隊長は嬉しかったに違いない。





母の愛を受け、嬉しかったに違いない。





「か…、母さん……」




どれくらい振りに彼は彼女を母と呼んだのだろう?





その期間の長さは寿永隊長を再び抱き締めた操様の様子を見てうかがい知れた。





「良かったね……、母さん……兄さん……」




私の隣に立っていた汀様は目元を服の袖で拭っていた。