「切碕……」




「あぁ……、その目……。朱寧と似てる……」




切碕は私達が一度も会ったことのない母親の面影を私に重ねている。





「母とは何処で……?」





何となく母との出逢いが気になった。





母は切碕を殺人鬼と知っていて愛したのだろうか?





それとも──。





「さぁ……?その辺の記憶は蘇った時に抜け落ちているみたいだ……」





「そう……」





「でも、彼女を愛していたのは覚えてるし、子供を身籠ったのも覚えてる……」




赤い瞳を細めた父にはもう不思議と恐怖を感じなかった。




感じるのは母に対するまっすぐな愛だ。






切碕は空を仰ぐように上を見上げた。





「彼女と朱寧の泣き顔……、それが抜け落ちれば良かったのに……」





彼女?




彼女って一体誰の──。






「切碕、やっぱり蘇ったのね……」





ふと、聞こえた凛とした声に、切碕は上から声がした方へ視線を向けた。





「うん、久しぶり……。君も年を取ったね、アリスちゃん……」





そこにいたのは切碕が愛した女性──、藤邦アリスさんがいた。