私は切碕を殺そうとした。




奴を殺そうとしたとき、不思議と高揚感があった。




肉を、骨を断つ感覚が気持ち良かった。





何でこう思ってしまったのかは分からないけど、感じたことがある。





私は切碕の娘だ。





それは己の中にあった残虐性を見て知った。





「浅井、お前は堕ちるな。堕ちようとしても俺が何度も引きずり上げてやる。だから、血に負けるな」






死んだと思っていた彼が私の手を強く握ってくれる。





この手なら堕ちようとしても、何度も私を引きずり上げてくれそうだ。





何度も助けてくれたこの手なら……。





私は頷くと、少し離れた所で壁に寄りかかって座り込んでいる切碕に視線を移した。





私が振り回した刀や拳銃の弾丸がかすったのか、切碕の顔や腕、足には血が滲んでいた。





でも、一番の怪我は切り落とされた腕の傷だろう。





私は寿永隊長の手を離して、切碕にゆっくり近付くとぐったりとする父親を見下ろした。





「参ったな……、もう動けないや……」





見た目は私と紅斗と変わらない年齢なのに、私と紅斗、摂紀お兄ちゃんの父親。





もう何十年も前に生まれた人だ。